この記事の要点
生成AIの導入が止まるのは、対象業務・判断基準・情報の扱い・担当の4つを着手前に決めていないためです。この4つを先に決めると、検証後に議論ではなく判断ができます。
生成AIの検証を始めた企業のうち、業務に組み込むところまで進むのは一部にとどまります。止まる理由を伺うと、モデルの性能や費用の話はほとんど出てきません。出てくるのは、決めていなかったことの話です。
検証は終わったが、続きが決まらない
よくあるのは、部門横断のチームで数か月かけて検証し、「一定の効果は確認できた」という報告で終わる形です。報告のあと、次に何をするかが決まりません。効果が確認できたのに進まないのは、何がどうなったら本格導入するのかを、着手前に決めていなかったからです。
検証の目的が「使えるかどうかを確かめること」になっていると、確かめ終わった時点で目的が達成されてしまいます。判断のための検証にするには、判断基準が先に要ります。
- 01 着手前 対象業務を1つに絞る 「全社で使う」から始めると、誰の業務が楽になるのかが定義できません。工数の大きい業務を1つ選びます。
- 02 着手前 判断基準を先に決める 何がどれだけ改善したら続けるのか。決めずに始めると、検証が終わっても議論が終わりません。
- 03 着手前 扱う情報の範囲を確定する 社内の非公開情報・顧客情報・未公開の重要事実のどこまでを入れてよいか。ここが未確定だと現場が使いません。
- 04 展開時 担当と運用を決める 誰が使い方を整え、誰が改善を続けるのか。担当が決まらないまま終わる例が最も多く見られます。
01〜03は着手前に決めておくと、検証後の判断が短くなります。
全社に配ってから考える、の落とし穴
もう一つ多いのが、まず全社にアカウントを配り、使い方は各自に任せる進め方です。着手は速いのですが、数か月後に残るのが「利用率」という数字だけになりがちです。利用率が高くても、どの業務がどれだけ楽になったのかは分かりません。
| 観点 | 全社ツール導入まず配る | 業務を絞って実装1業務から推奨 |
|---|---|---|
| 着手までの早さ | 速いアカウント配布のみ | 推奨やや遅い業務の分解が必要 |
| 効果の測り方 | 難しい利用率しか見えない | 推奨測れる対象業務の工数で見る |
| 定着の仕方 | 個人差が大きい使う人だけが使う | 推奨業務に組み込まれる手順として残る |
| 社内に残るもの | アカウント | 推奨手順と判断基準次の業務へ展開できる |
全社配布が無駄という意味ではありません。順番の問題です。
全社配布そのものが悪いわけではありません。1つの業務で手順と判断基準をつくってから配ると、配った先で何をすればよいかが伝わります。順番の問題です。
情報の扱いが決まらないと、現場は使わない
現場が使わない理由として最も多いのが、「入れてよい情報の範囲が分からない」というものです。禁止されているわけではないが、許可されてもいない。この状態では、リスクを取ってまで使う人はいません。
必要なのは詳細な規程ではなく、まず現場が迷わない粒度の線引きです。
- 公開済みの情報 … 制限なく使える
- 社内の非公開情報 … 指定した環境でのみ使える
- 顧客の個人情報・未公開の重要事実 … 入力しない
この3段階を先に示すだけで、現場の動きは変わります。細かい判断が必要な場面は、そのつど相談する窓口を決めておけば足ります。
着手前に決めておくこと
- 対象業務:工数が大きく、担当が特定できる業務を1つ
- 判断基準:何がどれだけ改善したら続けるのか
- 情報の範囲:入れてよい情報と、入れない情報
- 担当:使い方を整え、改善を続ける人
この4つが決まっていれば、検証が終わったときに議論ではなく判断ができます。決まっていない場合は、検証を始める前にここから着手されることをおすすめします。
