この記事の要点
生成AIの対象業務は、工数の大きさではなく「判断の回数」と「基準を言葉にできるか」で選びます。この2つがそろう業務は、成果が数週間で見え、社内に手順が残ります。
「まず工数の大きい業務から」。生成AIの適用先を選ぶとき、多くの場合この基準が使われます。合理的に見えますが、実際に進めると成果が出るまでに時間がかかることが少なくありません。
工数が大きい業務は、たいてい関係者が多く、例外処理が多い業務です。手順を書き出すだけで数週間かかり、書き出したあとも「この場合はどうするのか」が延々と出てきます。
見るべきは、判断の回数
同じ工数でも、単純作業を10時間続ける業務と、細かい判断を1日に200回行う業務では、生成AIの効き方が違います。効くのは後者です。
判断とは、たとえば「この問い合わせはどの部署に回すか」「この文面はこのお客様に出してよいか」「この請求書はどの勘定科目か」といったものです。一件あたりは数十秒でも、回数が多いため合計すると大きくなります。そして、判断のたびに担当者の集中が切れます。
| 観点 | 工数で選ぶ大きい業務から | 判断の回数で選ぶ回数の多い業務から推奨 |
|---|---|---|
| 着手までの準備 | 長い関係者と例外処理が多い | 推奨短い担当が特定できる |
| 効果が見えるまで | 数か月全体が動かないと出ない | 推奨数週間件数で確かめられる |
| つまずく箇所 | 例外の洗い出し | 推奨基準の言語化過去の判断例で代替できる |
| 次への展開 | しにくい個別性が高い | 推奨しやすい手順が型として残る |
取り返しのつかない判断をともなう業務は、最初の対象にしません。
もうひとつの条件:基準が言葉にできるか
判断の回数が多くても、その基準が誰にも説明できない業務は先送りにします。「長年やっているから分かる」で回っている業務は、まず基準を言葉にするところが本題になり、生成AIの話ではなくなります。
逆に、すでにマニュアルや過去の判断例が残っている業務は有力です。基準がすでに文字になっているため、そのまま指示に落とせます。
選定の手順
- 1. 判断の回数を数える1日あたり何回、誰が判断しているか。担当者に聞けば10分で分かります
- 2. 基準の所在を確認するマニュアル、過去のやりとり、チェックリストのいずれかがあるか
- 3. 間違えたときの影響を見るやり直しが利くか。取り返しのつかない判断は最初の対象にしません
- 4. 担当を1人決める手順を整え、うまくいかない例を集める人。兼任で構いませんが、明示します
この4つが埋まる業務がひとつでもあれば、そこから始められます。埋まらない場合は、埋まる業務を探すほうが早く、無理に始めると検証の途中で止まります。
よくある誤解:全社で使えないと意味がない
1業務での改善は小さく見えます。ただし、1業務で手順と判断基準をつくると、それが次の業務の型になります。全社に配ってから考える進め方では、この型が残りません。
順番の問題であって、規模の問題ではありません。
