この記事の要点
新規事業の撤退が遅れるのは、基準を始める前に決めていないためです。撤退ラインは金額・期間・指標の3点で定義し、判断日をカレンダーに置くところまでを着手条件にします。
新規事業でいちばん難しいのは、始めることではなく、やめることです。うまくいっていないと分かっていても、判断が半年、一年と延びていきます。
これは判断力の問題ではありません。やめる基準を、始める前に決めていないためです。基準がないと、やめる判断はそのつど「誰かが言い出す」形になります。言い出した人が責めを負う構図では、誰も言い出しません。
目次
撤退ラインは3点で書く
- 累計でいくらまで投じるか 金額 例:累計支出3,000万円
- いつまでに何が起きていれば続けるか 期間 例:6か月時点で有料継続10社
- 事実として確認できる数字か 指標 例:月次の継続率が60%を下回る
判断する日を、決めた時点でカレンダーに入れるところまでが設定です。
3つのうちどれか1つに触れたら、続けるかどうかをその場で判断します。判断する日をあらかじめカレンダーに入れておくところまでが、撤退ラインの設定です。
「あと少し」を防ぐ書き方
基準はできるだけ、解釈の余地がない形にします。
- △「十分な手応えが得られない場合」→ 判断が分かれます
- ○「6か月時点で、有料の継続顧客が10社に達しない場合」→ 分かれません
- △「投資対効果が見合わない場合」→ 見合うかどうかで議論になります
- ○「累計支出が3,000万円を超えた時点」→ 事実として確定します
数字にすると窮屈に見えますが、実際には逆です。基準が明確なほど、その手前までは思い切って動けます。
撤退=失敗ではない、と先に定義する
撤退ラインが機能しない会社では、多くの場合「撤退した人の評価が下がる」構造があります。ここを変えないと、基準を作っても運用されません。
評価するのは結果ではなく、基準どおりに判断したかどうかにします。基準に触れたのに続けた場合、そちらを問題として扱います。この順序を明示しておくと、撤退の提案が出てくるようになります。
着手条件として扱う
撤退ラインは、事業計画の付録ではなく、着手の条件です。決まっていない案件は、決まるまで始めません。始めてから決めようとすると、すでに投じたものが判断を引っ張ります。
